前十字靭帯を損傷してしまった場合、靱帯再建術後を受ける事になります。
その後リハビリを約半年行って練習に復帰していきますが、1番怖いのが再受傷です。
競技復帰を目指すと共に再受傷を防ぐ為に様々なリハビリを行い、復帰前にはパフォーマンステストを行なって基準をクリアしてから慎重に復帰して行きます。
今回はその復帰基準について考えてみたいと思います。
競技復帰基準とは
前十字靭帯再建術を受けた後に競技に復帰する場合の基準として以下が挙げられます。
- 術後経過期間
- 筋力
- パフォーマンス
術後経過期間
多くのケガからの復帰で基準となるのが時間です。
骨折などでは骨折部位や骨折の種類で、ある程度は骨癒合までの時間が予測できます。
前十字靭帯再建術の場合は6ヶ月以上かける場合がほとんどです。
そのため6ヶ月以下で復帰した場合を早期復帰と言われる事があります。
筋力測定
筋力の測定はBIODEXという測定装置を用いて計測したり、一定の高さのボックスからの片脚での立ち上がりが出来るかなどで判断します。
BIODEXという装置を用いる事でトルクなどの左右差を見る事ができます。
パフォーマンステスト
スポーツ復帰するためのパフォーマンスを見るテストで、様々なテスト方法があります。
一般的によく行うのが片脚での幅跳び(Single-leg Hop Test)です。
その他にもTriple Hopや片脚で6m進む時のタイムなどがあります。
どのテストも左右での距離や時間の差を見て、何%以内かで基準を設けています。
テスト合格と再受傷リスク
リハビリをしっかり行なって復帰テストを行った後に復帰したとしても、再受傷してしまう選手は一定数出てしまいます。
それをどうにかして防ぎたいというのが私たちの思いな訳ですが、
スポーツ復帰基準に合格する事と前十字靭帯損傷の再受傷リスクに関するこんな報告があります。
内容
復帰基準に関する過去の論文を集めてメタ分析したもので、最終的には4つに絞られています。
復帰基準には筋力テストを含めた12種類がリストアップされています。
そこからテストの合否と2回目の前十字靭帯損傷のリスクとの関連を見ています。
結果
復帰基準の合格と不合格を比較した際に、合格した後の再受傷のリスクの方が3%低いという結果が出ていますが、統計的有意差には到達しませんでした。
手術から復帰までの時間はリスクに影響を与える因子になり得るとしながらも、論文の条件や質などの問題もあり、復帰テストの合格基準と再受傷との関連性を結論づける事は出来ていません。
よってこの報告では、復帰基準を満たしたからといって再受傷のリスクを下げるとは言い切れないという事です。
まとめ
今回取り上げた論文ではリスクが3%低下するとしながらも、統計的な差には届きませんでした。
他にも似たような論文がありますが、やはり基準を満たせば再受傷のリスクを下げれるとまでは言い切れず、さらなる研究が必要としています。
よってテストに合格したからといって、それだけで復帰を決めるべきではないという事です。
テスト基準を満たすかだけで復帰を判断するのではなく、
テスト中の動作の安定性や他のエクササイズ中の動作等を総合的に評価しながら、競技への復帰を進めて行く必要があります。
リハビリを担当するトレーナーの動作を評価する能力や競技動作等への理解が非常に大切になってくるという事です。
能力の高いアスリートになってくると、動作エラーの代償も上手い傾向にあると感じています。
今後も動作を評価する能力の研鑽に励んでいきたいと思います。