アスレティックトレーナー が日常生活やスポーツにおける「健康」と「安全」について書いています

スポーツ現場での熱中症対策

猛暑で心配になるのが熱中症ですね。毎年のように熱中症で搬送されたり亡くなってしまったりといったニュースを目にします。

熱中症は最悪の場合には命を落としてしまう怖いものです。

そこで今回はスポーツ現場での熱中症対策について、まとめたいと思います。

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気温の計測

通常の天気予報で出される気温ではなく、WBGTという専用の温度計で測れる温度を計測してください。環境省のホームページで地域ごとのWBGTを見る事ができますが、それぞれの活動場所で実際に測定するのがベストです。
WBGTは湿度などの影響を受けるので活動環境によって大きく違います。特に人工芝の上はゴムチップがあるため高温になる傾向にあります。WBGT31、外気温で35以上は原則運動中止となっています。特に外気温が皮膚温より高くなると体内から熱を逃がすことが困難になります。
WBGT温度によって練習内容を変更するか、気温が高くなるお昼前後は避けて午前中の早い時間帯か夕方以降に練習時間等をシフトできると熱中症のリスクはかなり低くなります。
ぜひ各チームでWBGT計を持っておくことをお勧めします。測定機械も最近は安価なものがあるのでAmazon等で調べて見てください。

環境省熱中症予防情報サイト:http://www.wbgt.env.go.jp

体重管理

熱中症の原因の1つに脱水があります。練習の前後で体重を計り、体重が2%以上減っていたら、練習中に水分補給が十分に出来ていない可能性があります。

練習前後という短時間での体重減少のほとんどが水分です。体重の減少を把握することで練習中の水分補給を見直すきっかけにもなりますし、コンディションのチェックにもなります。

また翌日の練習までに体重が戻っていなかった場合には体内の水分量が減った状態で練習に参加することになるので、さらにリスクが高くなってしまいます。

以前働いていたチームでは、夏場は必ず練習前後に体重を測ってもらっていました。

そして次の練習日に体重が戻っていない場合はトレーナースタッフで共有して練習中に気にかけるようにしていました。

練習前後に体重計に乗る習慣をつけてみましょう。

暑熱順化期間の設定

暑さに慣れる期間を設定しましょう。

通常よりも強度を落とした練習からスタートして、1週間程度かけて少しづつ通常の練習量に戻していくイメージです。

特に長時間or高強度で走ったりする様なプログラムは非常に危険です。

また初心者や1年生も熱中症になるリスクが高いため、しっかりと暑熱順化させる必要があるでしょう。

深部体温を下げる

熱中症には体表温度ではなく、深部体温が深く関係しています。

この深部体温を下げるのに効果的なのが、冷水浴や冷たい飲料の摂取です。氷のうやアイスタオルは確かに冷たいですが、深部体温を下げる効果は高くありません。

よって練習中に飲む飲料は常温ではなく、極力冷たくする方が熱中症の予防効果が高まります。休憩中の飲料として、スポーツドリンクと氷をミキサーにかけた「クラッシュアイス」を準備したり、運動中に深部体温を下げる手段として手を冷水につけるという方法もあります。

また、運動前に深部体温を下げておくと、運動中の深部体温の上昇が抑えられるという報告もあります。
運動前に冷水浴やクラッシュアイスの摂取を行う事で、熱中症予防効果が期待できると言えるでしょう。

給水タイムの設定

水を飲めという指示だけしても選手によって水を飲む量や頻度は様々です。中にはほとんど水を飲もうとしない選手もいます。

そういった水を飲んでいない選手を出さないためにも、練習中に何回か短めの給水タイムや練習の中盤で15分程度の給水を含めたレスト時間を設けましょう。

タイミングや回数などは練習の強度や練習をしている時間帯等によって違いますが、練習の区切りや30分毎など一定の間隔で給水タイムがあるとある程度は選手の飲水量を確保できます。

水分摂取を選手任せにせず、チームとして取り組むべきです。

自己申告の環境づくり

意外とこれが非常に重要だと思っています。

熱中症は軽目の頭痛や吐き気といった症状から始まり、徐々に悪化していくケースが多いです。そのためこの位なら我慢できるという思いから練習等を継続してしまい、結果的に重症化してしまいます。

1年生は体調不良を言い出しにくかったり、上級生は責任感などから無理をしてしまうという事をよく聞きます。

チームや団体として体調不良を早期に申告できる環境や雰囲気を作ることが重要です。



熱中症はしっかりと対策をすればある程度防ぐとこができるものです。それ故に毎年の様に熱中症による死亡事故のニュースを見るたびに悲しくなります。
熱中症を甘く見る事なく、安全に夏季のスポーツ活動を乗り切って欲しいと思います。
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